日本人は、口が臭くて残念な国民。

口臭について調べていたら、面白い本に出会いました。光文社から発行されている光文社新書『日本人はなぜ臭いと言われるのか』。著者は、内科医・認定産業医の桐村里紗（きりむらりさ）先生です。今回はこの本の内容から、興味深いポイントをピックアップしてご紹介します。

まずはじめに、こんなアンケート結果から。<br class=”nu–” />日本人は欧米人に比べ、体臭もきつくないし、清潔なイメージがありますよね。ところが、口臭は別物でした。歯周病予防の情報サイト「オーラルプロテクトコンソーシアム」の調査によると、在日外国人の約７割が「日本人の口臭にガッカリした経験」があり、「オーラルケアをもっと徹底してほしい」と願っているというのです。これにはびっくりですね。

日本人は、どうして口が臭いのでしょう。

では、日本人はどうして口が臭いのでしょう。それは、「日本人の口腔ケアに対する意識がかなり遅れているから」と桐村先生は指摘します。その理由の一つは、文化の問題。もともと日本人は、欧米人のように日常的にキスをしたり、ハグをしないので、口腔ケアにそれほど熱心ではなかったと考えられます。それに、もう一つは、高額な治療費に対する危機感。医療費の高いアメリカなどでは、虫歯で歯医者にかかれば莫大な治療費を請求されかねません。そのため、小さい頃から口腔ケアの教育をしっかり受けるそうです。

口臭の主な原因は、口腔内の細菌やカビ。

口臭の原因で多いのは、やはり口のなかの汚れや細菌。健康な人の口腔内には、たくさんの常在菌（細菌・真菌）が暮らしています。すなわち、口の中は菌やカビだらけ。それらはふだん、バランスを保っていますが、口腔ケアが十分でないと、常在菌が一気に増殖。それらの菌はやがて歯間や歯肉、歯周に炎症を起こし、悪臭を放つようになります。また、殺菌作用のある唾液の分泌量が減って口が乾いた状態が続くと、常在菌の働きが活発になり、口臭が強くなるといいます。

口臭は、病気のサイン。

口臭には、誰もがもつ生理的な口臭と、病気による病的口臭があります。たとえば生理的な口臭は、起床時や緊張時、口が乾いたときの口臭。にんにく、アコールなどによるニオイも生理的口臭で、これらは適切な口腔ケアで防ぐことができます。<br class=”nu–” />問題なのは、病的口臭。その一部を本書から紹介しましょう。

腐敗臭・腐肉のようなニオイがしたら…

その原因は歯周病（歯肉炎、歯周炎）など口腔内の感染症によるものかもしれません。ちなみに、35歳以上の日本人の８割は歯周病といいますから、５人に４人は、口の中から腐敗臭がするということになります。怖いですね。このほか、腐敗臭は、鼻や喉の感染症や炎症、口腔内・咽頭頭の悪性腫瘍などの疑いもあるそうです。

イオウのようなニオイがしたら…

虫歯がかなり進行している疑いがあります。

甘酸っぱいニオイがしたら…

厳格な糖質制限ダイエットや断食などをすると、甘酸っぱいニオイが…。コントロール不良の糖尿病の場合も、このニオイがするそうです。

腐った卵のようなニオイがしたら…

胃炎、胃・十二指腸潰瘍など、胃腸障害になると、こんなニオイがするそうです。

カビのようなニオイがしたら…

肝機能障害の疑いがあります。肝臓で解毒されるはずのニオイ分子が分解されず、カビのようなニオイとなります。

アンモニアのニオイがしたら…

腎機能障害の疑いがあります。アンモニアが尿から排泄されず、口臭となります。末期の肝機能障害でもこのニオイがするそうです。

こうして見ていくと、口臭は単なるエチケットというだけじゃなく、そこに、重大な病気が隠されていることもあるようです。でも、口のニオイは、なかなか自分では気づかないもの。患者さんや身近な家族の口臭に気づいたら、勇気をもって、遠慮なくアドバイスしてあげたいものですね。

◎口臭のお話は、もりだくさん。次回は、気になる口臭の対策法について、引き続き、桐村先生の著書からご紹介していきます。お楽しみに〜♪

『日本人はなぜ臭いと言われるのか　体臭と口臭の科学』光文社新書
著者:内科医・認定産業医 桐村里紗
発行:株式会社光文社